お別れ

今日は1日心配事相談を終え、急いで大切な方のお通夜に向かいました。

平成6年、本山の長谷寺で修行生活をしていたある日、境内を歩いていると背後から「若様~!!!」という声で振り向くと、その人がニコニコと笑顔で手を振っていてくれました。

なんでここにいるの~???それまではご近所のおばぁさんという感覚でしかいなかった人が立っていたのです。
「なんでここのいるの?」とびっくりして話を聞くと、西国三十三番観音霊場を巡拝している最中で、第8番の長谷寺を参拝に来たのだとか・・・。

それまで「ご近所」とした意識したことのない人が、その日以来、本当に大切な人になりました。

その時に一緒にいた友人の修行僧から、宿舎に入るなり言われました。
「関~、おまえ若様だって(笑)!おまえは一体何者なんだ~(笑)」・・・と。友人の住むお寺ではそんな風に「様」などと呼ばれたことは全くなかったようです。

けれど、その言葉を聞いて22才だった私は頭に天誅をくらったような感覚を覚えました。
私なんかよりはるかに人生経験を積んだ人が、私などを「様」づけで呼んでくれる。「お寺様」「お坊様」「千手院様」「若様」などと。

その日以来、普段はバカばっかりしている私ですが、せめて袈裟をつけた時は立派な「様」になれるよう努力しなきゃいけないな、期待に応えられるよう頑張りたいと、その時の「様」という言葉が強烈に胸に刺さりました。

その後、私は平成7年に浦佐に帰りましたが、その人は私を決して呼び捨てするような事はなく、千手院の御詠歌講を引っ張りながらお寺に貢献を続けてくれました。その間、御詠歌を通じて温泉に行ったり、御詠歌の全国大会で各地へ旅行したり、本山を参拝したりしながら私を育ててくれました。

最近、私の知る範囲では菩提寺の呼び方を気をつけて聞いていると、無意識に「あの坊主」「あの寺」と呼ぶ人が多いように思います。
「様」「さん」という方は随分少なくなりました。それだけお寺の信頼が落ちている証拠でしょう。

明日は、その方の葬儀です。
生前にいただいたご恩情に精一杯の供養で応えられるよう臨みます。

そして感謝です。またいつか御詠歌を一緒に唱えたいです。楽しかったです。大切にして下さったこの千手院を精一杯守り、より良きお寺になるように心を新たにして参ります。

ちょっと固い内容になりましたが、素直な思いを綴ります。

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