般若心経

大切な大切な娘さんを急な病で亡くし、悲嘆にくれてくれて、どうしようもない気持ちが抱えたお母さんが来寺したことがあります。

その娘さんは私もよく知っている人。仕事もでき、家族思いで、旦那さんも良い人、妻としての器量も、何をしてもできた女性でした。ただ子供は授かりませんでした。

あまりに急な病に冒され、最後まで強い意志をもって病と闘い続けたが容体が急変、最後に病室で見た姿が目に焼き付いて忘れられない・・・せめて夢の中でもいいから会いたいが、姿を見せてくれない。

娘さん亡き後、涙は止まらず、上手く寝ることができず、食欲も、何もかも気力がおきない・・・そんな日々が続くとどんどんと人相は変わり、周囲からは心配されるが、このどうしようもない、やり場のない想いをどうすれば良いのだろうか?

そう言ってお寺を訪れてくださいました。

最終的にお母さんの気持ちは誰にも分からない、ただ話を聞いて差し上げることしかできない。せめて読経をあげてご供養を上げることしかできない。

ただ弘法大師さまは、ご自身の著書の中で亡き御霊を供養するひとつに「般若心経を書写しなさい」とおっしゃっています。

お母さんに写経用紙をお渡し、書き方をお話ししました。何枚も何枚も書いてご供養されることでしょう。ある枚数を書いたらお寺へ持ってきて、ご一緒にご供養しましょうとお話ししました。

お経というものには、不思議な力があると思います。頭では分かっていても、理屈では分かっていても、どうしようもない気持ちになる時があるものです。

お母さんと、いつか高野山奥の院へ御礼のお参りができることを念じています。

Follow me!

墓地

前の記事

さぶぅ~
御詠歌

次の記事

数珠洗い